前回は小葉紫檀(レッドサンダー)日本名紅木(コウキ)紫檀の話までしました。今回も紫檀の話を続けましょう。繰り返しますが、紫檀と言われるものは、全てマメ科の木と考えて良いと思います。マメ科の木は、工芸の世界では、磁器の白い釉薬の原料にも使われます。釉薬と言うのは陶器や磁器の表面のガラス質を作り上げる材料で、ケイ素と重金属の混合体です。磁器は1250度以上の温度で焼かれますから、鉄やウラン、マンガンなどの重い金属以外は、蒸発してしまう温度です。マメ科の木で作った釉薬が白い色として残るという事は、かなり重い金属が内部に含まれているという事になります。ですから紫檀はそのほとんどが、水にかろうじて浮くぐらいの重さで、比重にすると0.9前後あります。中でもチンチャン(手違い紫檀)は特に重く、水に沈みます。これはタイやミャンマーなどに産する木材で、紫檀の代表と言ってよいかもしれません。私が今までに見せていただいた、中国製の高級二胡に使われている紫檀と言われるものの殆どが、このチンチャンでした。江戸時代に日本で"本紫檀"と言われたものは、今では日本にも中国にも殆ど入って来ません。景徳鎮で磁器の釉薬になったのか、あるいは家具の材料になってしまったのか、残念なことにその本物の"本紫檀"には、私はお目にかかることができませんでした。
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