忘れられないレッスン
私の主課(ニ胡レッスン)は毎週月曜日であった。月曜日が主課なのは好きじゃない。
理由は土日が練習漬けになるからだ。特に大学一年生は必修科目や朝8時からのレッスンも多く土日は休みたいのが本音である。しかしそんなことも言ってられない。ニ胡の勉強をするために、遥々日本から来たのだから。
そんなわけでL先生の第2回目のニ胡レッスンの日がやってきた。前回宿題として出された5曲の練習曲を自分なりに練習してその日を迎えた。
先生:「じゃ練習曲から弾いてみなさい」
私:「はい」
……………………
あっ間違えた
…………………えっと……………
うわ…途切れてばっかりだ……。
なんとか最後まで弾き終わって先生の顔を見る…………
先生:「君は日本からわざわざ来てるんだよね?」
私:「……はい……」
先生:「日本から飛行機で時間をかけ、お金もかけて勉強しに来ているのに、その出来で両親に申し訳ないと思わないのか?」
私:「はい………」
泣きそうな気持ちになった。私は練習しなかったわけではない。練習したのだ。言い訳に聞こえるかもしれないが、ただ先生の前で緊張して、うまくいかなかったのだ。
昔、母によく言われていたことだが、家で100%出来ても、先生の前や、たった数分間の舞台上ではその60%も出来ないということを。200%の練習量で80%出来るか出来ないかの世界なのである。悔しかったし、うまく出来なかった自分に腹がたった。
結局その日は、なんとか先生の前で涙をこらえて、宿舎に帰って大泣きをした。なんだかとても悲しかったし、練習部屋から聞こえてくる他の生徒のニ胡の音色はとてもキレイで、私にはいつあんな音色が出せるのかと思うと、なんだか道のりは程遠いように思えた。
いつになったら彼らのように上手くニ胡が弾けるようになるのだろうか…。毎日、そんなことを考えながら、練習をしていた。
芸術照(イーシューヂャオ)
"芸術照"とは何か?芸術的な照明?いやいや、ちゃんとしたプロのカメラマンに撮って貰える写真屋のことである。中国にあるこの写真屋さんはかなり前から人気で、いたる所にある。
安い価格で、本格的メイクと豊富な品揃えのレンタル衣装があるスタジオでプロのカメラマンが撮ってくれる写真は、まさにモデルになった気分♪
この芸術照だが、通常、結婚で撮るパターンとそうでないパターンに分かれていて、結婚でない場合は、自分の青春の1ページを残したい人だけでなく、自分の妊婦姿を残したい人、芸術感のある裸体をとってもらいたい人や、私たち音大生のように、プロフィール写真として使いたい人など、様々である。
初めて撮った芸術照は上海であった。3パターン衣装を選べて、メイクと撮影費用、そしてアルバムにしてくれる費用込みで、600元ほど。日本円にして1万円にも満たないほどの安さ。もちろん表情やポーズ等、初めてでもプロのカメラマンが撮りながら指示を出してくれるから、あまり困らない。ただ、どの写真屋もそれぞれの雰囲気があり、事前にその写真屋の雰囲気をネットで調査してから、決めた方がよい!
そんなわけで、かれこれ私も4回ほど芸術照を撮ってきたが、最近のお気に入りはこの写真♪
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注目:写真背景にあるドレスのなびきは、風によるものではなく、何度もタイミングを合わせてなびかせたスタッフの努力によるもの。 |
平野 優紀(ヒラノ ユキ)/ 芸名 オウセイ
中国生まれ、日本育ちの二胡奏者。江南絲竹の名門の出である母の影響のもと、幼少より中国音楽に親しむ。2006年中国政府奨学金生(全額免除)として中央音楽学院に留学。2010年卒業し、本格的に活動を開始する。同年11月紀尾井ホールにてリサイタルを行い、ファーストアルバム「花韻」を発売。現在、二胡の講師として教える傍ら、様々なコラボレーションを通じて、日中の架け橋になりたいと願っている若手二胡奏者の一人である。