期末テスト
 学校生活にも慣れ、日々二胡の練習に明け暮れる、我ら日本人留学生、平野優紀にいよいよ初めての期末テストのシーズンがやってきた。

 まず主課以外では授業中に、先生たちがテスト範囲を告げるのだが、この時の教室だけは異様に静か。というのも、実は、中国の大学生が皆がそうなのかは不明だが、ここ中央音楽学院の生徒(私の民族楽器科)は面白いくらい授業中、先生の話を聞かなかったのである。
日本の教育に慣れていたせいもあって、すごくびっくりしたのだが、先生の話を聞かないばかりか、友達とおしゃべりする生徒、後ろでトランプゲームをしている生徒、他の授業の宿題をやっている生徒、小説を読んでる生徒など、本当に様々な方法で、とにかく………聞かないのである 

 先生も注意するのだが、それぞれの専攻楽器の主課を重視するためか、単位だけとってくれればいいと思っている先生もいて、あきらめ半分のため、極度には注意はしないのである。そのため真面目に聞こうとしている生徒だけが、前の席に集まる。しかしその日のテスト前の授業だけは違った。皆いかにポイントを聞き取り、テストで合格点を取るか必死であった。

 隣のある生徒:
 「ねぇねぇ、授業ノートをみせてよ」
 私:「いいけど〜」
 隣にいる生徒:
 「・・・・・・・・・なにこれ
 ・・・・・・・・・・聞く人間違えたかも」

なぜかというと・・・・・・・・.そう、私は中国語と日本語を混在で書いていたのだった。
みんな普段から聞こうよ、とよく思うのだった。

 さて各専攻楽器のテスト前になると、皆が練習に励むため練習棟が込み合いだす。練習棟の一階には小さな窓があり、練習をしたい人はそれぞれ、自分の顔写真が載っている練習カード(月120時間分練習できるように管理されている)を渡すと、引き換えに練習部屋のキーを渡してくれる。
 しかしテスト前になると、3時間おきに一度キーを返さないといけないが、人数が多い分、回転が遅く、順番待ちとなる。練習部屋には各部屋に一台ピアノがあり、冷暖房完備もされていて、快適に集中ができる環境であった。

写真は卒業する数ヶ月前まで使っていた旧練習棟で、現在新しい練習棟が建ち、更にハイテクな設備となった

 練習棟の廊下を歩いていると、同じ階で他の生徒が弾いてる二胡の音色が聞こえてくる。誰かな〜っとのぞきにいってみると、同級生だったりする。
 一年目の私は基礎がしっかり出来ていなかったので、練習曲ばかりであったが、曲をもらえた時には、よく二胡の同級生に練習部屋で聞いてもらったものだった。みんな日本に興味があり、聞いてもらう傍ら、日本のことや他の同級生のこと、先生の噂話などおしゃべりをして楽しかったな〜。

 そんな練習棟での練習だが、音大だけあって皆の練習時間は半端じゃない!一日7、8時間こもりっきりで練習するのである!つまり食事、休憩、風呂以外ずっーと練習三昧!!!7、8時間って皆さんどんな感覚かわかりますか?辛そうなイメージですが、2、3時間毎に休憩を取入れながらだと3セットで意外といけたりするんですよ?!
 最初は慣れなかった私も、皆の練習ぶりに圧倒されて、のちに次第に8時間の練習も苦じゃなくなってきたが、最初は、やはり大変でした。
そしていよいよ迎えた最初の期末試験!その結果は?!

つづく

平野 優紀(ヒラノ ユキ)/ 芸名 オウセイ

中国生まれ、日本育ちの二胡奏者。江南絲竹の名門の出である母の影響のもと、幼少より中国音楽に親しむ。2006年中国政府奨学金生(全額免除)として中央音楽学院に留学。2010年卒業し、本格的に活動を開始する。同年11月紀尾井ホールにてリサイタルを行い、ファーストアルバム「花韻」を発売。現在、二胡の講師として教える傍ら、様々なコラボレーションを通じて、日中の架け橋になりたいと願っている若手二胡奏者の一人である。