ニ胡の名曲「二泉映月」の地を訪ねて

 ふとしたきっかけで、「二泉映月」の地、無錫へ日本人代表として演奏旅行にいくことになった。大学3年の冬であった。初めてのオーケストラの伴奏でソロが弾けるいいチャンスであった。

 阿炳のことを知らなくても、二泉映月を知らない中国人はいない。それくらい有名なニ胡の代表曲、ニ泉映月。皆さんはこの作者のことをどれくらいご存知だろうか?

 阿炳こと、本名、華彦鈞は盲目の民間演奏家である。道士の父より音楽を学び、270曲以上の民間楽曲を作曲したが、現に残っている曲目はたったの6曲のみ。
貧しい境遇のなか、街で琵琶やニ胡を演奏することにより、生計を立てていたが、盲目であったため数々の苦労を経験し、社会に対する不満や怒りを音楽を通して表現していた。阿炳の地を訪ねること、それはニ胡の根源地へ旅することではないだろうか?

 北京より2時間足らずで南京の空港へ到着。そこからバス移動で無錫へ。目的は・・・・民間音楽家、阿炳誕生115周年のコンサート、二泉映月音楽会のためであった。
冬の無錫の寒さは厳しい。北京とは違う。もちろん気温は北京の方が
断然低く、風もビュービュー吹き、保湿クリームを常に塗らないと、肌がすぐ乾燥してカサカサになってしまうし、ニ胡の木材もひび割れたりしてしまうが、どこでも部屋に入れば24時間暖房がついているため、とっても暖かいのである。それに比べ、南方はまったく違う! 上海や南京、そして無錫の南方の寒さは、骨に沁みる寒さであり、各部屋に暖房らしきものはどこにもなく、部屋でも厚着をしている人が沢山・・・うぅぅぅぅ寒い。

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平野 優紀(ヒラノ ユキ)/ 芸名 オウセイ

中国生まれ、日本育ちの二胡奏者。江南絲竹の名門の出である母の影響のもと、幼少より中国音楽に親しむ。2006年中国政府奨学金生(全額免除)として中央音楽学院に留学。2010年卒業し、本格的に活動を開始する。同年11月紀尾井ホールにてリサイタルを行い、ファーストアルバム「花韻」を発売。現在、二胡の講師として教える傍ら、様々なコラボレーションを通じて、日中の架け橋になりたいと願っている若手二胡奏者の一人である。