第7回 黒い木
二胡製作工房「光舜堂」の店主、西野和宏さんに、二胡を作る最も重要な素材である木について、わかりやすく綴っていただきます。題して「二胡を作る木の話」。 日頃何気なく触れている二胡ですが、そこに用いられている木にはどのようなパワーが秘められているのでしょうか?

 黒く見える二胡でも、使われている木にはさまざまなものがあります。二胡を見て、その木の樹種を見分けるというのは、かなり大変な事です。ましてや、紫檀や黒檀などの硬くて密度の詰まっている木を見分けるのはよけい大変でしょう。
 先日、「黒檀の二胡です」と言って、ある知り合いが見せてくれました。弾いてみると、なかなかに弾き込んだ重低音と、「えっ!」と思うくらいの明るい音色の混ざった音でした。紫檀系の中に黒檀の独特の沈んだ重低音が聞こえます。よくよく見てみると、胴は紫檀で出来ていました。紫檀と言ってもパドウクです。
 パドウクは、タイのあたりに産出する、ローズウッド系の木です。紫檀と呼ばれることも多いのですが、たまに、老紅木として売られていることもあります。比較的導管の強めな木で、見た感じは、黄花梨やマホガニーと言っても、違いが解らない材料ですが、それらと違うのは、柾目に取った時に、紫檀系の縞目が出ることです。

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