第8回 珍しい樹種
二胡製作工房「光舜堂」の店主、西野和宏さんに、二胡を作る最も重要な素材である木について、わかりやすく綴っていただきます。題して「二胡を作る木の話」。 日頃何気なく触れている二胡ですが、そこに用いられている木にはどのようなパワーが秘められているのでしょうか?

 先月号まで、紫檀、紅木、黒檀など、いわゆる唐木と日本で言われる、二胡に使う木のことを書いてきました。中国で生産された二胡は、その全てが、これらの木でできているという意味で、その名前で呼ばれます。
 ところで問題は、これらの木が、日本で言う紫檀や、紅木、そして黒檀とは、必ずしも一致しないことです。木材の名前というのは、国によってそれぞれ名前の付け方が変わります。日本の中でも、樹種の名前は、地方によって変わるのです。関東のヒバの木は東北に行くとアテ、長野あたりではアスナロと呼ばれます。これはほんの一例ですが、商品として世の中に販売される時には、購入者は大変戸惑います。楽器の世界では、ギターなどはその辺大変に進んでいて、殆どが現地名あるいは英語名で統一されています。
 二胡の場合、以前は紫檀と言えば、タイ産のものでした。しかし、東南アジアの紫檀の類が非常に少なくなり、アフリカや中南米の材料が、何々紫檀という名前で二胡に使われるようになりました。ひいては、今までは二胡に使われていなかった、同じ東南アジアの他のマメ科の物が、現地名を無視して何々紫檀として二胡に使われるようになってきたのです。

続きは本誌をご覧下さい。